解説
(a):求めるのは、受電端での三相皮相電力[MV・A]である。これを$S_{3r}$とすると、有効電力,無効電力,皮相電力③の通り、
$S_{3r}=\sqrt{3}V_rI$・・・①
である。設問の与条件で、既に受電端線間電圧$V_r$=60kVが与えられているので、残りは電流Iさえ分かれば皮相電力を算出できる。
電流Iを求めるために、送電線での電圧降下の側面から考えていく。
送電線路の電圧降下①の通り、線電流をI[A], 受電端負荷力率角をθ, 1相あたりの線路抵抗をR[Ω]、1相あたりの線路リアクタンスをX[Ω]とした時、送電線路の線間電圧の電圧降下⊿Vは近似式を利用して、
⊿V=$\sqrt{3}(RIcosθ+XIsinθ)$ ・・・②
と表現出来る。
設問の与条件より、R=6[Ω]、X=4[Ω]、cosθ=0.8なのでsinθ=0.6、電圧降下率は受電端電圧基準で10 %なので、⊿V=60[kV]×0.1=6[kV]であり、これらを②へ代入すると、
6×10³=$\sqrt{3}(6×0.8×I+4×0.6×I)$
I=$\frac{6×10^3}{\sqrt{3}×7.2}$[A]・・・③
③と$V_r$=60[kV]を①へ代入すると、
$S_{3r}=\sqrt{3}V_rI=\sqrt{3}×60×10^3×\frac{6×10^3}{\sqrt{3}×7.2}=50×10^6[V・A]=50[MV・A]$
したがって、(3)50.0[MV・A]が正解
(b):送電線の電圧降下の近似式は設問(a)で使用した形を少し式変形して、送電線路の電圧降下②の通り、
⊿V=$\frac{P_{3r}R+Q_{3r}X}{V_r}$・・・④
と表現出来る。($P_{3r}$:受電端三相分の有効電力、$Q_{3r}$:受電端三相分の無効電力)
調相設備で調整後の電圧降下は設問より10%なので⊿V=6[kV]、また、調相設備では無効電力を調整しているが、有効電力は変わらないので、$P_{3r}=S_{3r}cosθ=65×0.6=39[MV・A]$となり、電線1 線の抵抗がR=6Ω,誘導性リアクタンスがX=4Ωであるので、これらを④に代入すると、
6×10³=$\frac{39×10^6×6+Q_{3r}×4}{60×10^3}$
$Q_{3r}$=31.5[MV・A]
これが、調相設備で調整後の無効電力である。
調整前の無効電力は$Q_{3r}=S_{3r}sinθ=65×0.8=52[MV・A]$であるので、
調相設備で供給する無効電力は
52-31.5=20.5[MV・A]である。
したがって、(2)20.5が正解。