解説
(a):ベース端子を切り離し、さらに$v_i(t)$=0 Vとすると、回路図は下図のように簡略化できる。
したがって、14kΩと2kΩの直列回路に直流電圧12Vが印加されているので、2kΩに印加される電圧は$V_B=\frac{2}{14+2}×12=\frac{1}{8}×12=1.5$[V]である。
次に、コンデンサのインピーダンスが2kΩに比べて十分に小さい時には、下のベクトル図のように、合成インピーダンス≒2kΩであるので、コンデンサのインピーダンスを無視して考えることができ、
また、直流電圧源も0Vと考えるので、下図のように簡略化できる。
したがって、2kΩには$v_i(t)$=100sinωt[mV]がそのまま印加される。
したがって、$v_B(t)=V_B+A_Bsin(ωt+θ_B)$とすると、$V_B$=1.5[V],$A_B$=100[mV],$θ_B$=0である。
(b):まずは、交流信号$v_i(t)$の入力が無い時の、直流電圧$V_C$を求める。
(a)で求めた通り、$V_B$=1.5[V]であり、設問の与条件の通り、$V_{BE}$=0.7[V]であるので、抵抗0.8kΩに印加される電圧は1.5-0.7=0.8[V]となる。0.8kΩの抵抗に0.8[V]の電圧が印加されているので、流れる電流は$I_E=\frac{0.8}{0.8×10^3}=1.0×10^{-3}[A]=$1.0[mA]である。トランジスタのベース端子に流れる電流が十分小さいので、コレクタ電流$I_C$≒エミッタ電流$I_E$と近似でき、$I_C$=1.0[mA]である。このコレクタ電流が、抵抗5kΩに流れた時の電圧降下は$V_D$=5×10³×1.0×10-3=5.0[V]である。
図の通り、直流電圧$V_C$と$V_D$の和が直流電圧源の電圧と等しいので、
$V_C$+$V_D$=12
$V_C$=12-$V_D$=12-5=7[V]である。
次に、交流成分だけ考える。交流信号$v_i(t)$=100sinωt[mV]=0.1sinωt[V]が入力された時には、(a)で求めた通り、コンデンサ成分は無視できるので、$v_B(t)$も$v_i(t)$と同じ振幅・位相・周期で変化する。$V_{BE}$は0.7[V]で一定であるので、0.8kΩに印加される電圧も$v_B(t)$つまり$v_i(t)$と同じ量だけ、変化する。このとき、0.8kΩに流れるエミッタ電流の変化量は、$\frac{v_i(t)}{0.8×10^3}=\frac{0.1sinωt}{0.8×10^3}$[A]であり、先程同様に、コレクタ電流$I_C$≒エミッタ電流$I_E$と近似できるので、抵抗5kΩによる電圧降下の変化量は5×10³×$\frac{0.1sinωt}{0.8×10^3}=\frac{0.5sinωt}{0.8}$=0.625sinωt[V]である。$V_C$=12-$V_D$であるので、$V_D$が0.625sinωt[V]変化すると、$V_C$は-$V_D$、つまり-0.625sinωt[V]だけ変化する。$sin(ωt+π)=-sinωt$であるので、$-0.625sinωt[V]=0.625sin(ωt+π)$[V]
したがって、$v_C(t)=7+0.625sin(ωt+π)$であるので、
最も近いのは、$V_C$=7、$A_C$=0.6、$θ_C=π$の(4)である。