原子力発電所の安全対策①解答

正解:(3)

解説:原子力発電所では、安全を確保するために、レベル1:異常の発生防止、レベル2:異常の拡大防止、レベル3:事故時の影響緩和、の3つのレベル(多重防護)に分けた安全設計がされている。このうち、レベル1:異常の発生防止では、原子炉自身での自己制御性と、安全装置・機器への信頼度向上に分けて設計し、自己制御性では、以下のような効果により異常の自己制御を行う。

・ドップラー効果:燃料の大部分を占める$^{238}U$は、ある特定の範囲のエネルギーをもつ中性子に対して強力な吸収作用を示すが、温度が上昇すると、このエネルギー範囲が拡大し、より多くの中性子に対して強力な吸収作用を示し、中性子がどんどん吸収されていくことで、それ以上、核分裂反応していくことを抑制し、出力を下げる。ドップラー効果というと、移動音源と観測者の相対速度により聞こえる周波数が変わる効果(近づいてくる救急車の音が高く、遠ざかる救急車の音は低く感じること)を想像する人もいると思う。それもドップラー効果であるが、原子炉の世界でも同じ名前で違う意味のドップラー効果が存在する。

・ボイド効果:沸騰水型の原子炉で核分裂が過剰になり、温度上昇すると、沸騰により蒸気泡ボイドが発生すると、中性子に対する減速効果が低下し、これにより核分裂反応していくことを抑制し、出力を下げる。

・負の温度効果:原子炉で核分裂が過剰になり、温度上昇すると、減速材の密度が下がり、減速効果が悪くなるので、これにより核分裂反応していくことを抑制し、出力を下げる。

核分裂反応では、中性子(中でも速度が抑えられた熱中性子)の存在が重要になるが、ドップラー効果では、中性子自体を吸収して数を減らし、ボイド効果・負の温度効果では中性子自体は吸収しないが、減速効果が低下し、熱中性子の発生が抑えられて高速中性子のまま存在するので、核分裂反応が抑制される。

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