解説
(a):最終目的は放出される熱量[kJ/s](単位がとても大事!:単位がヒントみたいなもの)を求めること。与えられた条件の単位を組み合わせていき、最終的に[kJ/s]に辿り着けばよい。
カッコ良く、“放出熱量=復水器冷却水量×冷却水密度×冷却水比熱×冷却水出入口温度差”なんて覚えなくても問題ない。一歩ずつ順序立てて整理すれば初対面でも解ける。
まず、与条件の中で最終目的地[kJ/s]と分子が同じ単位はどれか探す(これは私なりのコツ)・・・海水の比熱4.02[kJ/(kg・K)]が見つかる。これが意味するところは、1kgの海水を1K(ケルビン:温度差でいうと1℃と同じ)温度上昇させるのに必要なエネルギーは4.02kJということ。なので、海水が何kgあって、温度差が何℃だったか分かれば、求めたい熱量kJに辿り着く。
海水重量:密度1.02×10³[kg/m³](1 m³あたり1.02×10³kg)の海水が24[m³/s](1秒間あたり24 m³)流れているので、1.02×10³[kg/m³]×24[m³/s]=24.48×10³[kg/s](1秒間で24.48×10³kgの海水が流れる)。
海水温度差:与条件そのまま7℃=7K
したがって、1秒間で24.48×10³kgの海水があって、その海水を7℃温度上昇させるには、
4.02[kJ/(kg・K)]×24.48×10³[kg/s]×7[K]=689×10³[kJ/s]
最後に、答えと同じ形式(小数点位置)に調整すればいいので、
6.89×10⁵[kJ/s]・・・したがって、正解は(4)
もう一段階ひねって出題すると、熱量の値は何[kW]ですかと問われるので、W=J/sであることは覚えておいてほしい。
(b):まず、タービン室とは下図の通り、タービンと復水器を合わせたものである。
次にタービン室効率を求める。“効率”というのは何にでも共通で、入力(分母)に対してどれだけ出力(分子)できたかの比であるので、それぞれ求める。
出力:タービン室の出力とは、どれだけタービン軸(発電機軸)を回す仕事をしたか、ということである。設問にある与条件:発電電力(600MW)は最終的に発電機から取り出せた電力であるので、タービン室の仕事量より少し小さい。設問のもう一つの与条件:発電効率(98%)があるので、発電機からすると600÷0.98=612[MW]の入力があって、発電量が600[MW]なので、発電効率が98[%]である。発電機の入力=タービンの出力(仕事量)であるので、求める出力は612[MW]=612[MJ/s]である。M(メガ)はk(キロ)の1000倍なので、[kJ/s]に単位を揃えると、612×10³[kJ/s]
入力:今回は設問の与条件でタービン室への入力熱量が直接与えられている訳ではないので、計算して求める。
入力熱量=仕事をする熱量と仕事をしない熱量の合計熱量
であり、先ほどのタービン室出力は仕事をする熱量(仕事量)なのに対して、仕事をしない熱量(損失熱量)が、(a)問題で求めた復水器で蒸気が水に戻る過程で放出する熱量689×10³[kJ/s]である。(今回は海水として捨てているので、仕事をしない熱量としているが、この復水器の廃熱を暖房などで利用すれば、仕事をする熱量として加算することもできる)
タービン室効率:$\frac{出力}{入力}=\frac{612×10^3}{612×10^3+689×10^3}=\frac{612}{1301}$≒0.470=47.0[%]
したがって(3)が正解